家具修理を行うわたしたちの工場には、日々さまざまな家具が運び込まれてきますが、
中には同じ種類の家具が何度となくやってくることもあります。

たとえば、イタリア・porada社のダイニングチェア、ARLEKIN CHAIR(左)とANXIE CHAIR(右)。
どちらも、優雅な曲線が息をのむほど美しい椅子です。
 
 
ARLEKIN CHAIRに不具合が生じる場所は、主に2箇所。
 
 
porada社arlekinchairとanxiechairの修理
1箇所目は、写真の白い丸で囲った部分。
背もたれからつながる後ろ脚と座枠との接合部分に、ぐらつきが生じやすいようです。
 
 
porada社arlekinchairとanxiechairの修理
ここは左右とも、それぞれ8mmのダボ2本と1本のボルトの「3点」で固定されているのですが、
まずボルトがゆるみ、その後ダボが折れてしまうことで、
支える点が「1点」になり、ぐらつきが生じているとのこと。
実際、修理のご依頼をいただいたARLEKIN CHAIRを解体してみると、ほぼすべてのダボが折れてしまっているそうです。
 
 
porada社arlekinchairとanxiechairの修理
座面と脚を解体したところ。
背板は外せないので、この状態から組み直していきます。
 
 
porada社arlekinchairとanxiechairの修理
この部分の修理は、2本のダボを打ち直し、ボルトを締め、新たにビスを1本追加することで、
支える点を「4点」に補強します。
使ううちにまたボルトがゆるんでしまっても、ビスがあるので、
ダボが折れるほどのぐらつきは防ぐことができるというわけです。
 
 
porada社arlekinchairとanxiechairの修理
修理を担当した木工職人・ヒカワによる、わかりやすいイラスト。
赤色の部分が、ダボやビスの入っている方向です。
 
 
porada社arlekinchairとanxiechairの修理
椅子は前後の荷重がかかるため、ARLEKIN CHAIRのように横から接合する構造だと、
接合部分にどうしても負荷がかかり過ぎるのですね。
 
 
porada社arlekinchairとanxiechairの修理
そして2箇所目は、前脚のぐらつき。
 
 
porada社arlekinchairとanxiechairの修理
前脚は座枠に対して下から垂直に接合されているのですが、
こちらもまた、椅子の「前後に荷重がかかる」性質に対してぐらつきが生じやすい構造。
(真上からの荷重にはとても強いのですが)

そこでこの部分の修理は、ボンドでの再接着に加えて、
座枠の内側から前脚に対して斜めにビスを1本追加することで、補強しています。
 
 
 
porada社arlekinchairとanxiechairの修理
いっぽう、ANXIE CHAIRにみられる不具合の多くは、
その特徴的な脚の接合部分(写真の白い丸で囲った箇所)のぐらつき。
 
 
porada社arlekinchairとanxiechairの修理
バイソンの角のような有機的なフォルムの脚は、3本のパーツを2箇所で接合しているのですが、
後ろ側の接合部分がぐらついていることが多いそうです。
 
 
porada社arlekinchairとanxiechairの修理
ギザギザとした接合面は、両手を組んだ様子に似ていることから「フィンガージョイント」と呼ばれているもの。
接着面の表面積を増やすことで接着強度を高める技法です。
ここには8mmのダボが2本入っているのですが、こちらの方は両方とも折れていることはまれなのだそう。
 
 
porada社arlekinchairとanxiechairの修理
この部分の修理は、ボンドでの再接着。
ただ、脚が直線ではないため、そのままではクランプでがっちり固定できません。
 
 
porada社arlekinchairとanxiechairの修理
そこで、クランプを固定するための専用の治具を作り、それを曲線の脚に取り付けることで、
固定できるようにしています。
 
 
porada社arlekinchairとanxiechairの修理
ちなみに脚の後ろ側のほうがぐらつきやすいのは、
上方向からの荷重に対して切断方向に接合してあるからだそうです。
イラストはまたまた木工職人・ヒカワ作。
絵も上手ですが、字もきれいです!
 
 
美しい曲線もさることながら、上質なチェリー材を使い、繊細な手仕事で仕上げられた魅力的な2つの椅子。
おそらく、愛用されている方もたくさんいらっしゃるのではないかと思います。
お使いになるうちに、今回ご紹介したような不具合が生じることもあるかと思いますが、
こうしてきちんと修理することで、引き続き大切にお使いいただけます。
お困りのことがありましたら、ぜひご相談くださいね!