椅子張り場をのぞくと、高居さんがアンティークチェアの張り替え中でした。
足もとには、こぼれ落ちた藁(わら)が。

「土手を作るのに、藁を使ってん。」と高居さん。
 
 
アンティーク椅子張り替え
「土手」というのは、座面がこんもりボリューミーに盛り上がったアンティークチェアの、縁の部分のこと。
 
 
アンティークチェア張り替え
高さとある程度の硬さ、それに加えて程よい弾力を出すため、
束ねた藁を麻でくるみ「土手」を作るのだそうです。
(こんな風に土手作るねんで、と見せてくれる高居さん)

最近の椅子張り現場ではなかなか見ることのない藁。
張り替え中のアンティークチェアは、おそらく40年くらい前に作られたらしいのですが、
この頃の椅子には当たり前のように使われていた材料なのだそうです。
 
 
アンティークチェア張り替え
いっぽう、こちらのアンティーク調ソファは、比較的新しいもの。
土手には、「硬質チューブ」が使われていました。
なるほど、形状も質感も、土手にぴったりです。

硬質チューブがあるのに、なぜわざわざ藁を使うんですか?と高居さんに尋ねると、
「本物のアンティークチェアは、できるだけ昔ながらの材料を使って直したいねん。」
とのこと。

座面にクッション性を持たせるために、現在ではウレタンを使うのが主流ですが、
ウレタンが無い時代に作られたフランス製アンティークチェアなどは、
パーム(ヤシの実の繊維)や馬毛などの天然素材を詰め物として使っていたそうです。

ウレタンのような石油製品は、約20年で、油分が抜けパサパサの粉々になってしまいます。
(もちろん、その前にへたってきてしまいますが)。
対して、天然素材のパームや馬毛や藁などは、通気性が良くなかなか劣化しないのでより長持ちするのだそう。

とはいえ、現在ではなかなか手に入りにくくなってしまったパームや馬毛。
そこはさまざまな硬さや弾力が種類豊富なウレタンで代用し、
まだ手に入る藁は活用しようというわけなのでした。

何十年も前に、丁寧に作られたアンティークチェア。
その時代の仕事に対する高居さんの敬意のようなものを感じた瞬間でした。
高居さんはやっぱりダンディです!

fingermarks椅子張り職人高居さん
ちなみに、研修旅行中の高居さん。ダンディ!!